こんにちは、Dr.パパスです。
今や生活に欠かせなくなったスマートフォン。
皆さんは1日のうちどのくらい使っているでしょうか?
仕事だけでなく、娯楽にも使っていると結構な時間触れてませんか?
以前から過度にスマホを使う「スマホ依存」は健康に悪影響を与えることが知られています。
自分のお子さんにはあまりスマホをいじって欲しくないと思う親御さんも少ないでしょう。
今回は親のスマホ依存が子どものスマホ依存に与える影響を検討した論文を紹介します。
こどもをスマホ依存にしないために、親が何をすればいいのかのヒントになると思います。
●まずはスマホ依存の簡易診断で親のスマホ依存度をチェックしてみましょう
●良好な親子関係は、子どものスマホ依存は減らす可能性がある
今回の元論文はこちら。
目次
結論:親のスマホ依存は子どものスマホ依存と相関
スマホ依存が健康に与える影響
スマホ依存は、アルコール依存や薬物依存と異なり精神疾患としてはカテゴリーされてません。
しかし、精神疾患の診断基準の中では「行動障害」として認知されています。
実際にスマホ依存は、成績に影響するだけでなく疲労や睡眠障害、うつ病や不安、衝動性といった心身を衰弱させる事が分かっています。
参考 長時間のSNSはうつの危険?パパクエ日本で2019年に行われた研究では、22〜28%の若年層がスマホ依存と報告されています。
今回の研究が行われた中国においても23%の青年がスマホ依存とされています。
4人に1人がスマホ依存っていうのは結構な確率ですので、決して他人事ではないですよね。
親のスマホ依存は子どもにも悪影響を与える可能性
そんなスマホ依存を予防するためには、その危険因子を特定するのが得策です。
中国の研究グループは、親子関係が子どものスマホ依存にもたらす影響に着目し研究を行いました。
思春期の学生およびその保護者にアンケート調査を行った結果、
②親の過保護は、子どものスマホ依存と弱い関係をもつ
③親が過保護なほど、親子のスマホ依存の関連が強かった
という結果が得られました。
今回の研究は横断的な観察研究なので因果関係(例:親のスマホ依存が子どもスマホ依存の原因となる)までは分かりません。
そのため、「関係をもつ」とか「関連する」といった記載になっています。
簡単にいうと、
①子どものスマホ依存は、親のスマホ依存が影響している可能性がある
②親が過保護だと、子どもがスマホ依存になる可能性が高まるかもしれない
という感じです。
研究方法
中国の10〜15歳の学生と保護者にアンケート調査
上で述べたように今回の研究方法はアンケートを使った横断的な研究です。
対象は中国の10〜15歳の学生およびその保護者、計9515組です。
さすが中国だけあって規模が凄いですね。
2021年の7月から9月にかけて中国中西部の中所得都市である蘭州市で行われました。
中所得なので幅広い層で適応できそうなデータです。
アンケートの方法は現代らしく、オンラインで調査しています。
中国なのでWeChatという中国で広く普及しているSNSが使われています。
アンケートで聞いた項目は、
②親子関係のスケール
③親子の絆のスケール
の3点になります。
スマホ依存はあるか?
スマホ依存のスケールは、中国版の携帯電話中毒指数を用いて評価しています。
これは広く使われているスマホ依存スケール(SAS)の中国版です。
全17項目あり、煩雑なので日本でも用いられている簡易版を今回は紹介します。
②スマホのために、授業、宿題、あるいは、仕事に集中することが難しい
③スマホを使用しているときに、手首や首の後ろに痛みを感じた
④スマホなしで我慢することはできないと思う
⑤スマホをもっていないときには、いらいら、そわそわする
⑥スマホを使っていないときでも、スマホのことを考える
⑦スマホが、すでに日常生活に大きな悪影響を与えていても、決してスマホの使用はやめない
⑧SNSのメッセージのやり取りを見逃さないように、いつもスマホを確認している
⑨思っていたよりも長い時間スマホを使ってしまう
⑩周囲の人からスマホを使い過ぎだと言われる
これらの問いを1(まったくない)〜5(常にある)の5段階で答えます。
男性31点、女性33点以上でスマホ依存が疑われます。
これよりもやや詳細な項目を用いてスマホ依存を親子で調べています。
こちらのHPで簡易検査ができるので是非やってみてください。
親子関係はどうか?
親子関係スケールは親密さのスケールと葛藤のスケールの2種類があります。
②わが子は動揺すると、私に慰めを求める。
③わが子は私との関係を大切にしている。
④私がほめると、子どもは誇らしげにほほえむ。
⑤わが子は自発的に自分のことを話してくれる。
⑥子どもが感じていることに同調しやすい。
⑦私の子供は、自分の感情や経験を率直に私に話してくれる。
①わが子と私は、いつもお互いに苦労しているようだ。
②私の子どもは、私が身体的に愛情を注いだり、触ったりするのを嫌がる。
③わが子は私にすぐ腹を立てる。
④我が子供は、叱られても怒ったままか、抵抗する。
⑤わが子に接することは、私のエネルギーを消耗させる。
⑥子どもの機嫌が悪いと、今日は大変な一日になりそうだと思う。
⑦私に対する子どもの気持ちは、予測不可能であったり、突然変わったりする。
⑧わが子は私に対して卑屈になったり、人を操ったりする。
これらの質問を1(全くあてはまらない)〜5(確実にあてはまる)の5段階で答えます。
今回の研究では、親密のスコアをプラス、葛藤のスコアをマイナスとして合計点を尺度としてます。
合計点が高い方が親密という理解でいいかと思います。
親子の絆はどうか?
最後は親子の絆のスケールです。
こちらも良好とされるケアの項目と過保護の項目に分かれています。
①温かみのある声で話しかけてくれた
②私の問題や悩みを理解してくれそうだった
③愛想が良かった
④私と話し合うのが好きだった。
⑤よく微笑んでくれた。
⑥動揺しているときに気分を良くしてくれた
マイナスのスコア
①必要以上に助けてくれなかった。
②感情的に冷たいと感じた。
③私が何を必要とし、何を望んでいるのか理解していないようだった。
④自分が必要とされていないと感じた
⑤あまり話をしなかった
⑥褒めてくれなかった
①成長することを望まなかった
②私のすること全てをコントロールしようとした
③私のプライバシーを侵害した
④私の世話をよくしてくれた
⑤私をその人に依存させようとした。
⑥その人がいなければ、自分の面倒を見ることができないと感じた。
⑦過保護にされた
マイナスのスコア
①私が好きなことをさせてくれた
②自分で決めることが好きだった
③私が自分で物事を決めるようにした
④私が望むだけの自由を与えてくれた
⑤好きなだけ外出させてくれた
⑥好きな格好をさせてくれた
上記項目を1(とてもそう思う)〜4(とてもそうは思わない)の4段階で評価します。
少し複雑になっていてプラスの項目とマイナスの項目に分かれているので注意してください。
ケアの項目は27点以上、過保護の項目は13.5点以上だと高いとされるようです。
親のスマホ依存と子どものスマホの関連は?
以上のアンケート結果から得られたスコアを指標にして検討が行われました。
親のスマホ依存と子どものスマホ依存のスケールは関係しているのか?
親子関係や親子の絆は、子どものスマホ依存と関係しているのか?
親のスマホ依存が子どものスマホ依存との関係に、親子関係や親子の絆はどのような影響を与えるのか?
これらを様々な統計学的手法を用いて検討しています。
研究結果
親のスマホ依存は子どものスマホ依存と中等度の相関を認めた
アンケートのスコアに基づく検討の結果、
親のスマホ依存と子どものスマホ依存は相関関係を持つことがわかりました。
統計学的に有意であったことから、偶然の結果ではないということがわかります。
「どのくらい相関しているのか」に関しては相関係数が0.4と中等度でした。
0.7以上が強い相関になるので、まずまずの相関関係といったところです。
親のスマホ依存は子どものスマホ依存と無関係ではないわけですね。
親の過保護は子どものスマホ依存と悪影響
では親子関係と子どものスマホ依存に関してはどうでしょうか。
親子の絆で過保護のスコアが高いほど、子どものスマホ依存が多いという関係にありました。
これも統計学的には有意でしたが、相関係数は0.28と弱い相関でした。
とは言え、親の過保護は子どものスマホ依存の観点からみても良くないようです。
良好な親子関係は子どものスマホ依存に負の効果
一方で親子関係のスコアが高い、親子の絆におけるケアのスコアが高いほど、子どものスマホ依存は少ないという関係にありました。
相関係数はどちらも0.3程度とそこまで強い相関ではありませんでした。
しかし良好とされている親子関係は、子どものスマホ依存を減らす可能性があるということです。
子どものスマホ依存を減らせる可能性があるというのが分かっただけでも重要なデータかと思います。
親のスマホ依存と子どものスマホ依存の関係に影響する因子は?
今回の研究の目的として、子どものスマホ依存の予防策を調査する、があります。
そのため、親子関係のスコアが親子のスマホ依存の関連性に与える影響も検討されています。
しかし、親子関係のスコアや親のケアのスコアは、親子のスマホ依存に与える影響はなかったようです。
一方で、親子の絆における過保護は、親子のスマホ依存の関連性をより強めていました。
私なりの結論
とりあえず自分のスマホ依存をチェック
今回の研究から親のスマホ依存は子どものスマホに無関係ではないことが分かりました。
しかも中等度の相関なので無視はできません。
横断研究なので因果関係までは分かりませんが、子どもがスマホ依存になるリスクを少しでも減らす可能性があるのであれば、まずは親がスマホ依存にならないことが重要かと思います。
研究方法の項でも紹介しましたが、まずはご自身のスマホ依存度を調べてみましょう。
Dr.パパス
もしご自身がスマホ依存を疑うスコアであれば、スマホから距離を置きましょう。
最近はスクリーンタイムというアプリで客観的に操作時間を管理できるので、スマホ時間を減らすことから始めるといいと思います。
子どもをコントロールするのは逆効果
子どもがスマホをいじっていると過干渉になってしまうことを少なくないと思います。
何か子どもが悪さをしていると、良かれと思って介入するのは親の常ですよね。
しかし過保護になってしまうと逆効果な可能性が今回の研究で示唆されました。
親はヘルプをするのではなく、サポートをするというのは、「コーチング」の視点からも重要であることが知られています。
親の都合でついつい子どもをコントロールしたくなってしまいます。
しかし、その介入が「子どものため」なのか「親の都合」なのかは常に考えたいものです。
まとめ
いかがでしたか?
今回は親のスマホ依存が子どものスマホ依存に与える影響に関する論文を紹介しました。
まとめると
●オンラインのアンケート調査でデータを取得
●スマホ依存度、親子関係、親子の絆をスケールを使って調査
●親のスマホ依存は子どものスマホ依存と中等度の関連を認めた
●親が過保護と子どものスマホ依存は軽度の関連を認めた
●親のスマホ依存と子どものスマホ依存の関係は、親が過保護なほど強まる
●親子の良好な関係は、子どものスマホ依存が少ないことと関連していた
といった感じです。
スマホ依存は学業にも健康に悪影響なのでかわいい我が子にはなって欲しくありませんよね。
これからの社会でスマホはほぼ必須アイテムです。
子どもだけでなく、親もスマホとは上手に付き合っていきたいものです。
ちなみに私はこの本がスマホとの付き合いを見直すきっかけになりました。
スウェーデンの精神科医が、スマホの脳に与える影響を書いています。
思春期前後のお子さんやスマホ時間が長い親御さんの参考になると思います。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
明日からの子育ての参考にしていただけたら嬉しいです。