こんにちはDr.パパスです。
皆さんは普段お子さんのテレビを観る時間やYouTubeを観る時間は意識してますか?
最近はスマホ学習やプログラミング講座など、子どもが画面に触れる機会は増える傾向にあります。
このように画面を観る時間はスクリーンタイムと呼ばれます。
これまでの研究からスクリーンタイムの延長は子どもに悪影響を与えることが知られています。
有名なのはスクリーンタイムが延びると、運動時間や睡眠時間が減る、といった具合です。
では、スクリーンタイム自体が子どもに与える影響はどうなのでしょうか?
今回は、運動や睡眠の影響を除外したスクリーンタイムとうつ病の関連をみた研究を紹介します。
SNSを含めたスクリーンタイムが増えがちな中学生を持つ親御さんは必見です。
●1日2時間以上のSNSはうつスコアの上昇と関連
●短時間のテレビ視聴はうつスコアの減量と関連
原著論文はこちら。Tatsuhiko Kidokoro et al. frontiers in Pediatrics. 2022.
目次
結論:SNSを1日2時間以上みるのはうつスコア上昇と関連
始めに今回の研究結果を簡単に紹介します。
新しいスクリーンデバイスはうつと関連しているかも
今回の研究で検討したスクリーンタイムの対象は、
②オンライン動画(YouTubeなど)
③SNS
④オンラインゲーム
の4つです。
②〜④は最近になって普及してきたスクリーンデバイスであり、論文では新しいデバイスとされています。
まぁ確かに私が小さい頃はテレビ観るかテレビゲームするかくらいでしたね。
今回の研究で、うつ病スコアの減少と関連していたのは、①テレビ・DVDのみでした。
新しいデバイスはどれもうつ病スコアを増加させるか変わらない傾向にありました。
特にSNSは男女共通で、1日2時間以上の使用はうつ病スコアの上昇と関連していました。
昨今のSNSを巡る誹謗中傷問題などをみるに、SNSの扱いは注視すべきですよね。
運動をすることによってうつのリスクを減らせる可能性あり
今回の研究では、運動や睡眠の影響を統計学的に減らすため、それぞれの時間も調査しています。
そのデータを利用して、運動時間が多い人と少ない人、睡眠時間が多い人と少ない人で、うつ病のスコアがどのように変化しているかに関しても検討しています。
その結果、運動時間が中央値より多い人はうつ病スコアの低下と関連していました。
スクリーンタイムが多い人=運動が少ない人、ということを加味しても運動はうつに大して良い影響を与える可能性があるということですね。
研究方法
世田谷区の公立小中学生2万人にアンケートを実施
対象は、東京都世田谷区の公立小中学生 約23000人です。
結構な規模ですよね。
しかも日本でやられた研究なので我々の状況に置き換えやすいです。
小学生は親と、中学生は独自にアンケートに回答しています。
(1)テレビ、DVDをどのくらい見ていますか?
(2)オンラインビデオをどのくらい見ていますか?
(3)ソーシャルメディアをどのくらい使用していますか?
(4)オンラインゲームはどのくらいプレイしますか?
といった具合に週単位での時間を調査しています。
うつ病のスコアに関しては、アメリカ精神医学会によって開発されたうつ病質問票の修正版を使用しています。
この質問票は事前に妥当性と信頼性で検証されたものです。
運動時間も週単位での時間を聞き、日にち単位に平均化しています。
睡眠時間は、起床する時間と就寝する時間を聞いて割り出しています。
「30分未満」「30分〜1時間」「1時間〜2時間」「2時間以上」に分けて比較
アンケート調査で得たデータを用いて色々な解析を行いました。
それぞれのデバイスによるスクリーンタイムを、
「30分未満」「30分〜1時間」「1時間〜2時間」「2時間以上」
の4群に分け、30分未満を比較対象(30分未満の群とどの程度変化があるのか?)としています。
運動時間は中央値より、「長時間運動している」「短時間運動している」の2群に分けました。
睡眠時間は、ガイドラインに準拠して2群に分けています。
5歳〜13歳は1日あたり9〜11時間、14〜17歳は1日あたり8〜10時間の睡眠が推奨されています。
Dr.パパス
この時間を目安に睡眠時間が短い群と長い群に分けています。
研究結果
上記のグループ分けをした結果、うつ病のスコアがどうだったかをみていきます。
そもそも中学生の方がうつスコアが高い
最初に今回の研究対象全体の平均がどうだったかを表にまとめました。
小学生 | 中学生 | |||
男性 | 女性 | 男性 | 女性 | |
年齢(歳) | 9.7 | 9.3 | 14.0 | 14.0 |
スクリーンタイム(分/日) | ||||
テレビ・DVD | 80.2 | 84.5 | 98.7 | 112.1 |
オンライン動画 | 26.6 | 25.4 | 76.8 | 75.7 |
SNS | 1.6 | 3.2 | 28.5 | 54.7 |
オンラインゲーム | 18.7 | 7.0 | 74.1 | 22.4 |
うつ病(%) | ||||
抑うつ症状 | 3.3 | 2.7 | 9.5 | 8.8 |
運動と睡眠(分/日) | ||||
運動時間 | 74.5 | 47.1 | 69.3 | 52.3 |
睡眠時間 | 545.1 | 545.9 | 449.4 | 436.6 |
数字は全て平均値です(標準偏差はゴチャゴチャするので消してます)。
全体の傾向として、中学生になるとスクリーンタイムが増加して、睡眠時間が減ってますね。
それに伴ってかは不明ですが、うつ病のスコアも中学生になると上がっています。
対象をみると小学生のスクリーンタイムのうち、SNSに費やす時間は数分なので今後の検討からは除外されています。
オンラインゲームが男性に多く、SNSが女性に多いのはイメージ通りですね。
SNSが2時間超えるとうつのリスクが急上昇
ここからはスクリーンタイムによって4群に分けた比較結果になります。
クリックで拡大できます(左が中学生男子、右が中学生女子)
ご覧のようにSNSの時間が2時間を超えるとうつ病スコアが明らかに高いです。
2時間以内だと、横軸の1をまたいでいるので有意な関連はないという結果ですね。
中学生女子は運動によってうつのリスクが減っている
クリックで拡大できます(左が中学生男子、右が中学生女子)
今度は縦軸がうつ病スコアになっていて、横軸がスクリーンタイムです。
●が運動が短い群、◯が運動が多い群です。
右の中学生女子に関しては、運動が多いとうつ病スコアも低いという結果になっています。
SNSによって減少した運動時間を取り戻すと、うつ病スコアも低くなる、という可能性を示唆しています。
以前のうつと運動の研究でも、女性の方が男性より運動によるうつ抑制効果が高かったようで、方向性としては一致していますね。
睡眠時間はうつスコアを増減させず
変化がなかったので図は割愛しますが、意外な事に睡眠時間の長短はうつ病スコアに一貫した影響を与えていませんでした。
睡眠時間が短いことは抑うつと関連していますが、今回の研究ではその傾向は認めませんでした。
今回の研究対象者は比較的睡眠時間が長いため、ガイドラインによる長短で分けても差を認めなかった可能性はあると思います。
テレビの負の影響は少ない?
SNS以外のデバイスの影響はあまり一貫してなかったのですが、テレビは面白い結果でした。
クリックで拡大できます(上が男子、下が女子)
男子は小中学生共に2時間未満であれば、うつ病のスコアは低め。
女子は中学生のみ1時間以上であれば、うつ病のスコアが低め。
これは解釈が難しいですが、女子は小学生で同じ傾向がないため何とも言えません。
男子は短ければテレビ視聴が良い影響を与える可能性がありますね。
私なりの結論
テレビは社会的交流にも効果的かも?
今回の研究から、デバイス毎にスクリーンタイムの与える影響が異なる可能性が示唆されました。
結果の最後に紹介したテレビに関しては意外でしたね。
最近の「鬼滅の刃」に代表されるようなブームはテレビ始まりのことが多いです。
そのため、テレビを観てみんな話題について行くというのは子ども社会においては重要なのかもしれません。
ただ男子に限っては視聴時間が増えるとうつ病スコアが高かったので、やはり時間には気をつける必要がありそうです。
Dr.パパス
このくらいの時間なら安心なのかもしれません。
思春期のSNS使用は慎重に
一方でSNSに関しては2時間以上では明らかにうつ病スコアが高い結果でした。
これは時間依存性に変化しているようにも見えるため結構固いデータな気がします。
今回の研究は横断的な研究なので因果関係までは証明できていません。
つまり「長時間のSNSがうつ病スコアを増やす」とは言えないわけです。
「うつ病スコアが高い人はリアルの交流よりSNSでの交流を好み、結果的にSNS時間が長い」
という可能性もあるわけです。
今回の研究では、単に時間でしか評価してません。
SNSにおいては「発信者」か「受信者」かでも評価は変わってくるという意見もあります。
しかし、それらの事を考えても長時間のSNS使用は避けるべきだと私は思います。
今の時代は交友関係にもSNSは必須ツールなので、使い方に関しては早め早めにお子さんと相談しておくことが重要ではないでしょうか。
まとめ
いかがでしたか?
今回は小中学生を対象にスクリーンタイムとうつ病の関連を調べた研究を紹介しました。
●4種類のデバイス毎のスクリーンタイムによって分類
●30分未満の使用者を比較対象にして検討
●2時間以上のSNSの使用はうつ病スコア高値と関連
●テレビ視聴は短時間ならうつ病スコア低値と関連
●中学生女子は運動によってうつ病スコアが下がる可能性
●結論:2時間のSNSは避けましょう
以上です。
まだまだこれからの研究分野なので、結果は今後変わるかもしれません。
また面白い研究が出れば紹介いたします。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
明日からの育児に役立ていただけると嬉しいです。