こんにちは、Dr.パパスです。
我々の生活にも浸透しているAI技術。
仕事によってはAIに取って代わられるものもでてくるかもしれません。
以前紹介したAI時代に勝ち残るためのスキルに関する記事では、
どんな仕事がそういうものにあたるか?
そういった時代にどのようなスキルが必要なのか?
を紹介しました。
一言でいうと「読解力」が必要なスキルなのです。
しかし前回紹介した本ではそれを身につける手段に関しては触れられていませんでした。
今回はそのアンサー記事になります。
前回紹介した「AI vs. 教科書が読めない子どもたち」の続編にあたる「AIに負けない子どもを育てる本」を読みました。
その中の一部で私が特に重要だと思った点を紹介します。
本書には著者の考えの基盤となったリーディングスキルテストのお試し版が収録されています。
今回はこの部分には触れませんが、これだけでも購入の価値はある本になっています。
●読解力を上げる方法は確立されていない
●古典的な板書をする勉強法は有効かもしれない
●ドリルやプリントで脳に楽をさせない工夫を
目次
結論:科学的根拠に基づく方法は存在しない

科学的な検証は倫理的に不可能
この本の著者である新井紀子さんは数理論理学を専門とする理学博士です。
簡単にいうとガチガチの理系の先生ということですね。
理系の世界では、私が専門とする医学の世界もそうですが、エビデンス(根拠)を基にして考えるというのを非常に重要視しています。
例えば昔から慣習的に行われているイソジンのうがいは、水のうがいと風邪の予防効果は変わらないことが、研究データから分かっています。
このように慣習的に行われた事は根拠がないので信憑性に欠けるというわけです。
前回の記事でAI時代に必要となるスキルは「読解力」であると述べたのも、実際に著者が行った東大合格を目指すAIを作成する過程で得られた膨大なデータに基づいています。
データから導き出したことは非常に説得力があります。

本書では曖昧なことは言わないという科学者の信念がにじみ出ています
そんな本書において
読解力を身につけるための方法は「わからない」というのが結論です。
というのも因果関係を証明するには、子ども達を「読解力が身につくであろう教育」と「そうでない教育」の両者にランダムに分けて、長年観察し結果を得る必要があります。
読解力が身につくであろう教育を受けられなかった子ども自身や親の気持ちを無視してますよね。
こういった方法は倫理的に不可能なので、どういった教育をすれば「読解力」が伸びるか、という疑問に科学的根拠をもって応えるの非常に困難です。
教育方法→読解力アップを証明するには、倫理観に欠ける研究が必要
避けた方がいいのは文を読まない作業的な勉強
それでも著者の研究から得られたデータや、実際の教育現場での指導をみて経験からいくつかのヒントを得ていました。
避けた方がいいのは、穴埋め問題のようなドリルです。
勉強と言えば親が買ってきたドリルをやる、というのは定番のような気がします。
しかし、読解力を鍛えるという意味ではあまり良くない勉強法のようです。
というのもドリルを効率よくこなしている子どもは文のすべてを読んでないそうです。
文中に出てくるキーワードから、正しいであろう答えを選んでいます。
これは脳が楽をしようとする性質を持っているためです。
多大な労力を経て解答にたどり着くのと、楽に解答にたどり着くのでは、脳は後者を選びます。
確かに時間がない時の問題の解き方はキーワードから答えを連想した方が効率が良いです。
しかしこのキーワードから答えを出す方法は、まさにAIが得意とする方法です。
AIは膨大なデータを元に、キーワードから導かれる答えを数学と統計の力で手に入れます。
同じような方法で勉強してもダメなのは分かりますよね。
脳が楽をするキーワードから答えを導く勉強法(例.穴埋めドリル)は避けた方がよいかも
昔ながらの板書は効果的かも?
反対にどのような勉強法がいいのか?
著者が提唱している方法の一つとして黒板の板書があります。

板書なんて面倒だからプリントでよくない?
書くのも疲れるし
という事で配布されたプリントが配られることが多いかもしれません。
しかし、配られたプリントから重要なキーワードをマーカーでひく、というのではAIの勉強法と同じになってしまいます。
一方古典的な板書はどうでしょうか?
板書にはただ丸写しをするのでは非効率的なので、人の話をよく聞いて、板書を読み、要点を理解する必要があります。
これは文章の意味が分からないAIにはできない芸当です。
昔ながらの板書をする作業というのは文章の意味を理解するのに効果的な方法だったわけです。
板書は「話を聞いて」「板書を読み」「要点を理解する」というリーディングスキルを要する作業
幼児期〜小学校低学年

著者がもつ膨大のデータによると、リーディングスキルが伸びるのは中学生までで、高校生からは学年が上がっても伸びる傾向がみられくなるそうです。
そのため、小学生の前から読解力を伸ばす教育というのは意識した方がよさそうです。
本書には「科学的根拠はないですが」著者が長年の経験とデータから良いと思う方法がのっています。

その中でも、これぞ!というものをいくつか紹介します
幼児期は親や身近な大人との関わりあいが重要
幼児期、子どもは大人同士の会話を聞いて語彙を増やし、文法を覚えていきます。
そのため、一番身近な親が多くの語彙や正しい文法を使うことが重要です。
海外の研究では、裕福な家庭ほど幼少期に聞く語彙が多いそうです。
また絵本を繰り返し読んであげることも重要です。
大人は何度もよまされると、またかと思ってしまいますが、子どもはそれが楽しいのです。
絵本は子どもが言葉を学ぶ最高の教材です。
文字に抵抗を持たないように絵本は楽しく読み聞かせをしてあげましょう。
小学校での発達の差は気にしない
小学校に入学するとどうしても他の子どもと比較していまう状況もあるかと思います。
小学校低学年の時期の発達には非常に個人差が大きいのだそうです。
さらにこの時期の発達は、中学生以上の成績と関連しないそうです。
なので他の子どもと比較するのはやめましょう。
親子ともにストレスなだけです。

子どもの頃に他人と比較した親の発現は今でも覚えています
比較すべきは昨日の自分と、私は常に子どもにいっています。
読解力の基盤を身につける
この時期に読解力の基盤となる「係り受け」につながるスキルを習得するのを目指しましょう。
係り受けというのは、主語と動詞の関係といったようなどの言葉にかかっているかというものです。
「鳥が飛んだ」「お父さんが駅に着いた」といった、主語・動詞・目的語を使い、見たものを短い文で説明できる練習することで、自ずと理解できるようになってきます。
その過程で、文の基本構造を理解できるようになっていくようです。
特に子どもは主語や目的語を抜きがちですので、大人が嫌にならない程度に指摘してあげるといいと思います。
小学校中学年

板書>プリントを意識する
中学年くらいになると握力も増してきて、板書の基礎体力ができてきます。
その頃から3分くらい集中して板書する時間を設けるのが良いそうです。
板書の有効性は上で書いた通りです。
プリントは板書ができない子や希望する子に配布するのが望ましいです。
ただこれは学校の方針にもよると思います。
最近はプリントだけでなくタブレット端末も授業に導入されているので、板書の機会は少ないかもしれません。
そのため、家庭学習をする機会があればホワイトボードなどを用意して意図的に板書をしましょう。

ママ塾では板書もさせようかしら?
子どもが暗記に走らないように注意する
中学年になってくると「相対」という概念が出てきます。
1ドル100円と1ドル130円では、後者が円安である。
というのは相対的な考え方です。
また月の満ち欠けも、地球と月と太陽の相対的な位置関係で決まります。
こういった概念を理解できないと答えにはたどりつけません。
しかし、上の例では1ドルの後が大きくなれば円安と覚えてしまえば解決です。
月の満ち欠けに関しても形が変わる順番を丸暗記すれば答えは出せます。
上でも説明したように脳はサボるのが得意です。
暗記して答えが出せればそっちを選びます。
また子ども自身も暗記してテストの点数が上がれば、暗記に走ります。
しかしこういった方法では本質を理解できませんし、応用問題には手が出ません。
実際に落ちこぼれ時代の私も暗記に走り、応用問題で撃沈してました。

丸暗記は子どもの成長を止めてしまいます
見たことを正確に表現させる
理科の観察では、見たことをそのまま理解し、表現することが求められます。
例えば観察したものを表や図と使って発表する、みたいなものです。
これはAIが苦手な「イメージ同定」にあたり、リーディングスキルでも難しい分野です。
しかし、こういったスキルは将来レポート書くことや企画書を提出する時に必要になります。
相手に正確な情報をわかりやすく伝えるというのは、現代においても非常に重要です。
見たことを正確に書くというのは大人でも難しいので、この時期から意識させてみましょう。
小学校高学年

読解力の発達をチェック!
高学年になると発達の個人差は縮まってきます。
一方で習得してきたスキルの差は顕著になってきます。
この差を放置すると中学生以降の学力の差がさらに広がってしまいます。
そのため、まずはお子さんの発達度合いをチェックしましょう。
①暗記やドリルに頼ってないか?
②自己肯定感が低くないか?
③人の作業を見てから、自分の作業を始めてないか?
④グループ活動で意見をいうか?
こういった事ができてない場合は必要なスキルが身についてない可能性があります。
もし身についてない場合は、意識して会得できるようにしましょう。
新聞を読んで要約&感想を書く練習
文章を理解しているかをチェックするには、要約が最も効果的です。
著者は新聞記事を使った方法をすすめています。
興味のある新聞記事を選ばせ、読み上げさせた上で200字程度で要約させます。
さらに感想も200字程度で書かせるとより理解が深まります。
あっさり書いてますが、これって結構大人でも難しいですよね。
しかし時事問題に詳しくなれるので中学受験対策にも有効ですよね。
せっかく書いた要約や感想を批判すること、子どもがやる気を失くすだけなのでやめましょう。
箇条書きができるようにする
理科の実験では、手順通りに作業することが重要です。
でないと失敗してしまいますよね。
大人になっても複数の作業を正確な手順でやることを求められる仕事は多いです。
それには作業を「見た通りに」「時系列に沿って」「客観的に表現」できることが必要です。
手順を分かりやすく現す方法の代表例が箇条書きですよね。
中学年では箇条書きを直感的に読み書きできれば十分のようです。
一方、高学年からは客観的に、区切り方が適切か?手順漏れや重複がないか?時系列に並んでいるか?をチェックし修正する練習をするといいようです。
感想
いかがでしたか?
今回は、「AIに負けない子どもを育てる」の中から読解力を伸ばす方法の一部を紹介しました。
冒頭に書いたようにこの方法は、科学的根拠に基づいたものではありません。
しかし根拠はないけど、という真摯な姿勢で書かれたものですのでやる価値はあると思いました。
主語・動詞・目的語を正確に話すというのは私も普段から意識していましたが、ドリル学習の落とし穴に関しては目からウロコでした。
板書に関しても言われてみれば重要な気がするので家庭で実践してみる価値はあるかなと。
最後に本書のいいところ、悪いところ勝手にレビューします。
良いところ
- 膨大なデータがあり信憑性高い
- 現代の教育とは違う視点を学べる
- リーディングテストを収録
悪いところ
- リーディングテストの話が多い
- 前半は前回のAI本とやや被る
- 文章がやや難しい、文字数多め
良いところのリーディングテストに関しては、本記事では触れてません。
著者が作成した読解力をチェックするのに非常に有効なテストです。
ご自身の読解力をチェックできるのでこれをやるだけでも本書を購入する価値があるかなとは思います。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
明日からの子育ての参考になれば嬉しいです。