こんにちは、Dr.パパスです。
最近では、様々なサービスの普及から、スマホで読書をしている方も多いと思います。
かさばらないしので持ち運びも楽だし、スキマ時間にも読みやすいですよね。
そんな便利なスマホ読書は実際に紙読書と比較してデメリットはないのでしょうか?
今回はスマホ読書と紙読書における読解力の差を比較した面白い研究を紹介します。
(M Honma et al. Scientific Reports. 2022)
お子さんの読書習慣の参考に是非ご覧ください。
・紙読書の方が、スマホ読書と比較して読解力が良かった
・スマホ読書は、紙読書と比較して脳への負担が大きかった
という事で、この研究では紙読書>スマホ読書、という結論になっていました。
研究内容をわかりやすく解説します。
目次
研究方法
まずは今回の研究方法に関して簡単に説明します。
対象は大学生
今回研究対象となったのは、昭和大学の大学生34名です。
20名が女性とやや女性多めの構成で、年齢は20歳程度でした。
大学生が対象なので、高学歴な若者が対象といったところですね。
村上春樹さんの小説が題材
題材は村上春樹さんの「ノルウェーの森」と「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」。
これらの一部、日本語で約3000文字程度を抜粋したものを読んでもらいます。
読み方は、読む前に2分間の休憩をしてから、時間無制限で自由に読んでもらいます。
読んだ後は、2分休憩して読解力テストに挑むという流れです。
私はどちらの作品も読んだことがないので、難易度はわかりません。
10個の質問を解答
読解力テストの内容は、
「主人公の年齢は?」「主人公が乗った飛行機の名前は?」「物語の舞台は何月?」
といったように客観的なことを答える内容です。
「この時の自分の感情は?」とかだったら解釈の違いで正解が異なるので妥当な質問ですよね。
紙読書→スマホ読書 or スマホ読書→紙読書の順でランダム化
上記内容の読書→休憩→テストを1セットとして、題材が2種類、読み方が2種類の4セットを
順に行いました。
どちらが先かというのはランダムに分け、やってない方の読書を後から行う流れです。
参加者が少ないので、このランダム化クロスオーバー法は妥当な方法ですね。
研究結果
紙読書の方が正答率が高い!
各々の方法で読書をした後のテストの正答率を比較すると、
紙読書:8.9点
スマホ読書:7.4点
と紙読書の方が読解力が高まる
という結果になりました。
有意差を持って紙読書の方がスコアが高いので
偶然の結果というわけではないです。
Y軸が点数、Sがスマホ、Pが紙(M Honma et al. Scientific Reports. 2022より抜粋)
メインの結果は上記になりますが、他にも本を読んでいる時の読者の状態も観察しています。
スマホ読書では深呼吸が減少
深呼吸が呼吸のリズムをリセットすることや、呼吸と記憶には関連があるという先行研究があり、
今回の研究では呼吸に関しても検討しています。
スマホ読書と紙読書を比較すると、『読書中の深呼吸の回数』が大分違っていました。
紙読書:3.3回
スマホ読書:1.8回
でした。
スマホ読書では脳への負担が増加
また『近赤外線分析法』という方法によって脳への影響をみています。
簡単にいうと、近赤外線が出るバンドを頭にまいて、脳からの反射の程度をみる方法です。
スマホ読書(青)では紙読書(赤)よりY軸の活動性が上がっています。
(M Honma et al. Scientific Reports. 2022より抜粋)
この方法でみると『スマホ読書では紙読書と比較して前頭前野の過活動』
を認めたそうです。
これらの結果から研究者らは、
『スマホ読書による深呼吸の減少や前頭前野の過活動が、読解力を低下させた』
可能性を考えているようです。
感想
ここからは今回の論文を読んだ私の感想です。
正答率の違いは1.5問のみ
読解力は紙読書>スマホ読書という結果でした。
しかし、その差は10問中1.5問と個人的にはあまり大きな差ではないな、と感じました。
もちろん国語のテストとかであれば1問の差が重要になってくるとは思います。
でも日常の読書であればこの程度の差はどうってことないような気もします。
ただこれは3000字(読書時間でいうと約5分)でついた差なので、これがもっと多くなると
どうなるのかは興味があります。
脳への負担はスマホ「読書」によるもの?
私は専門外なのであまり詳しいコメントはできませんが、
脳の過活動は本当にスマホによる「読書」の影響なのでしょうか?
というのも過活動を示す活動度の上昇はスマホ読書を開始した直後に上昇しており、
「スマホによる読書」の影響というよりは「スマホを使う」ことによる上昇な気がします。
実際にスマホを使う際には、「SNSなどの脳内報酬を刺激するものを我慢する」という
無意識下のストレスがかかると言われています。
今回差のついた前頭前野はストレスによる影響を受けやすい部位であり、
恐らくスマホを見る際のストレスが結果に影響したのでは?と感じました。
研究者はスマホ読書中の深呼吸を推奨
深呼吸の減少が読解力の低下に影響したという考察から、
研究者はスマホ読書中の深呼吸を推奨しています。
これもスマホを見たことによるストレス反応(コルチゾール分泌)が、
体を緊張状態にさせた結果の様に感じました。
深呼吸をすることで理解が深まるのかは疑問です。
私の結論
感想を踏まえた上で、スマホ読書は実生活で使えるのでしょうか?
利便性で選ぶならスマホ読書
あえて紙ではなくスマホ読書を選ぶ理由はなんでしょうか?
1番の利点はやはり「いつでも・どこでも読める」という利便性でしょう。
スマホは現代社会の必需品なので、だいたい持ち歩いてますよね。
なのでスキマ時間にインプットできるスマホ読書は、
例え読解力がわずかに落ちても有効活用できる手段と思われます。
あとは家の中が本だらけにならないというのも大事ですよね。
持ち運べるなら紙読書
しかし、スマホを使用するという事が脳への負担をかけている、ということは
覚えておくべきだと思います。
スマホを使わなくても持っているだけで集中力や理解力が低くなるという研究は多くあるので、
もし持ち運ぶのが苦でなければ紙読書を選びましょう。
上の記載と矛盾してますが、私は持ち歩く本を1冊、スキマ時間に読む本を1冊
のように2種類の本を並行に読むことがまあまああります。
タブレット端末やKindleならどうか?
今回の研究でスマホ読書に使った端末は、5インチの端末でした。
5インチというと、今でいうiphone SEの大きさとより少し大きい程度です。
流石にこれで長時間読むというのは厳しいものがありますよね。
私は持ち運びに便利なKindleアプリはiPad miniを使用して読んでいます。
iPad miniやKindleなどのもう少し大きい端末で読んだらどうなのか?
というのは非常に気になるところです。
特に上に挙げたような端末は、ネットワークに繋がなければ通知が来ることもないので、
脳へ負担も少なくなり、差がないような気がします。
子供の読書は紙推奨
では子供の読書に関してはどうか?
これは断然、『紙読書>>スマホ読書』だと思います。
スマホ読書の最大の利点は「いつでも・どこでも」が可能な利便性です。
読書は非常に大切な習慣ですので、お子さんには是非『読書タイム』を設けるべきです。
そうであれば、スキマ時間の有効活用なんて考えなくていいですよね?
また大人でさえ制御が難しいスマホとの付き合いを子供が上手にできるとは考えにくいです。
幼少期のスクリーンタイムは、視力だけでなく、衝動性や集中力と反比例する研究もあるため
お子さんには是非『紙の本』を与えてください。
幼少期から本に慣れ親しむことは、学業だけでなく、お子さんの人生も豊かにしてくれる
と思います。
まとめ
いかがでしたか?
今回はスマホ読書と紙読書における読解力の違いを検討した論文を紹介しました。
研究結果自体は、『紙読書>スマホ読書』でした。
しかし、その差はあまり大きくないことを考慮するとスマホ読書における
「いつでも・どこでも」の利便性を上回るものではないかな、と思いました。
スキマ時間の有効活用には是非利用したいですよね。
お子さんの読書においては、脳への負担や、集中力、視力への影響などデメリットが
目立つため、紙読書が推奨されると思います。
大きくなったお子さんに紙読書をすすめる際には、良い論文かもしれませんね。
気になった方は原著も読んでみていただけたらと思います。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
途中で紹介した『スマホ脳』は、スマホを日常的に使う現代社会においては
是非よんでいただきたい本なので、いずれ紹介したいと思います。
今回の記事が明日からの子育ての参考になれば嬉しいです。