こんにちは、Dr.パパスです。
皆さんは昼寝に対して、どのようなイメージを持っていますか?
最近では昼寝の学習に対する効果が有名になりつつあり、とある中学校では昼寝を導入することで生徒全体の成績が上がったという報告もあります。
大人だと昼寝をしているとサボっているイメージがあるかもしれません。
しかし仕事においても午後のパフォーマンスを上げるために昼寝は有効だったりします。
Dr.パパス
では元々昼寝の習慣がある未就学児はどのような影響があるのでしょうか?
中学生のように成績向上に役立つのでしょうか?
今回はオーストラリアの未就学児を対象に昼寝の学習効果を検討した論文を紹介します。
元論文はこちら。
●学習した後に昼寝をした方が、言語の理解が向上した
●未就学児は、学習と昼寝のセットが良さそう
睡眠は知識の定着に重要
睡眠自体が知識の定着に重要である事は以前の研究でも示されています。
記憶の保管庫である海馬から、より高度な情報処理部分である大脳皮質に定着するには睡眠が必要です。
一夜漬けしてテストした後って面白いほど記憶が抜けますよね。
あれは一時的な記憶のみで、長期記憶に必要な睡眠を取っていないためです。
昼宴に関しても就学児において、空間記憶の向上に寄与していることが知られています。
これらの知見から未就学児における効果をみたのが今回の論文になります。
昼寝によって言語を扱うスコアがアップ
比較の方法は、
①昼寝なし:学習→テスト→昼寝→翌日のテスト
②昼寝あり:学習→昼寝→テスト→翌日のテスト
の両者におけるテストのスコアをみています。
テストは「文字と音のマッピング」と「知識の伝達」をみるものにに分かれています。
今回の研究では、②の昼寝ありの方が「知識の伝達」のスコアが高いという結果でした。
文字は知識の伝達にこそ利用価値があるので、言語学習には有用というわけですね。
研究方法
ここから研究内容に関して詳しく解説します。
オーストラリアの未就学児が対象
今回の研究対象はオーストラリアの3〜5歳の未就学児 約30人が対象です。
対象の未就学児は、もともと昼寝の習慣がある保育所2つから選ばれています。
この保育所では、特別な文字の名前や音といった学習は行われていませんでした。
日本でいうと、先取り教育をしてない一般的な保育園児といったイメージですかね。
②カードをみて文字の発音をしてもらう
③子ども用粘土を使った文字の作成
④単語を使った記憶ゲーム
⑤指定した文字を見つけるゲーム
上記のようなアクティビティを利用した学習をしてもらいました。
学習時間は1時間です。
昼寝の有無が学習後のテストにどのように影響するか比較
昼寝の影響が言語能力の向上にどのように影響するかは、テストを行って評価しました。
テストは大きく2種類です。
1つは、音を聞いて文字を見つける、文字をみて発音するといったテストです。
これは音と文字のマッピングをみています。
例えば、「エー」と試験者が発音したら「A」のカードを探す。
「A」と書いたカードを「エー」と読んでもらう。
といった具合です。
もう一つは、知識の伝達をみるテストです。
単語と非単語の2種類を行っています。
実在する単語と実在しない非単語を認識できるかを試しています。
言語のテストは、「TAP」と「CAP」を書いたカードを見せて「どっちがTAP?」と聞く感じです。
非言語のテストは、エイリアンの絵と非単語が書かれた2枚のカードを見せられます。
1枚はエイリアンの絵と「TAV」、もう1枚はエイリアンの絵と「CAV」です。
それをみて「TAVはどっち?」と聞きます。
マッピングと異なり、こちらの方が言語を認識して使う力を試されています。
このテストを事前にも行い、有効な評価方法かも検討をしています。
比較の方法は、冒頭にも触れましたが、
②昼寝あり:学習→昼寝→テスト→翌日のテスト
両者における事後テストと翌日のテストのスコアを比べています。
テスト時間は30分です。
研究結果
研究結果は表にまとめると以下の通りです。
識字(4点満点) | 発音(4点満点) | 知識の伝達(8点満点) | ||||
事後テスト | 翌日テスト | 事後テスト | 翌日テスト | 事後テスト | 翌日テスト | |
昼寝なし | 2.82 | 3.04 | 2.18 | 2.25 | 4.97 | 5.72 |
昼寝あり | 2.70 | 3.36 | 2.07 | 2.54 | 5.72 | 6.24 |
このうち、統計学的に有意な差があった(つまり偶然はなかった)のは、太字の部分です。
音の理解や発音に関しては差がなかった
聞いて文字を選ぶ、文字をみて発音するといったマッピングに関する学習の結果は、昼寝なしと昼寝ありで比較して差は認めませんでした。
単純に文字を認識するということは、睡眠による学習効果の定着には必要ではないのかもしれませんね。
言葉を理解して使うスコアに差があり
一方で、文字を認識して使う能力をみたテストでは有意な差を認めました。
文字と音の関係について学習した後に昼寝すると、その情報を基に言葉を認識する能力が高まっていたわけです。
特に事後テストでの伸びが良く昼寝の効果が現れている印象ですね。
私なりの結論
学習するなら昼寝の前に
今回の研究では、昼寝の有無によって学習の効果をみています。
もともと未就学児は昼寝の習慣があります。
であれば学習効果を高めるために昼寝をするというよりは、
昼寝の前に学習しておく習慣をつけるというのが正しい理解だと思います。
同じ学習をするなら、より知識が正しく定着するタイミングで行いたいですよね。
夜寝るのも大事
今回の研究で面白いなと思ったのは学習の翌日にもテストを行っていることです。
これは時間による知識の定着をみているのですが、昼寝の有無に関わらずテストのスコアは上昇する傾向にあります。
人間は寝て忘れるのではなく、寝る事によって知識を定着させているわけです。
やはり勉強するなら一夜漬けは避けたほうが良いということになりますね。
学生時代の自分に言ってやりたいです。
読解力を高める鍵は睡眠?
文字の認識や発音というのは1対1対応ですからAIの得意分野です。
文字を理解して情報の伝達手段として使うためには、言葉として認識するのが重要です。
言葉の意味を理解し使うの能力=読解力が求められます。
これはAIが苦手な分野ですので、これからの時代はここを伸ばす必要があるわけです。
昼寝が知識の伝達能力の向上に寄与している結果から、読解力向上にも昼寝はいい影響を与えるかもしれませんね。
参考 AI時代に勝ち残るためのスキルパパクエまとめ
いかがでしたか?
今回は、昼寝が未就学児の言語学習に与える効果に関する論文を紹介しました。
●学習後の昼寝が言語の習得に与える影響を検討
●文字の認識や発音に関するテストは変化なし
●知識の伝達に必要な単語の認識して伝えるスコアはアップ!
●学習するなら昼寝の前が効果的
といった感じです。
昼寝の効果は様々な報告がありますが、もともと昼寝する習慣のある未就学児でも有効という結果は面白いですよね。
しかもこれからの時代に必要な、読解力を伸ばしている可能性もあるとは。
勉強熱心なお子さんや親御さんは、学習のタイミングを変えてみてもいいかもしれません。
最後までよんでいただき、ありがとうございました。
明日からの育児の参考にしていただけると嬉しいです。