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【緑が多いと年間5万円お得!】子育ては田舎の方が良い?

こんにちは。Dr.パパスです。

新型コロナウイルスの流行に伴い、働く環境を選ばないテレワークが流行しました。

子育て世代に手厚い明石市に移住する家庭が増えたのも話題になりましたね。

都会はインフラが整備されて便利な反面、自然が少ないというデメリットがあります。

では実際自然が少ないとどのような影響があるのでしょうか?

今回は「住む場所の緑の多さ」と「医療費」の関連に着目した研究を紹介します。

お金では買えない健康を考慮すると田舎暮らしのがいいのかな、そんな論文です。

この記事を読んで欲しい人

●これから子育てを始める親御さん

●テレワークで住む場所を自由に選べる人

●自然が大好きな人

この記事でわかること

●アメリカのカリフォルニア州北部で行われた研究

●緑が多い場所に住んでいる人ほど医療費が少なかった

●緑が最も多い場所に住んでいた人は年間約5万円も医療費も少なかった!

元論文はコチラ

結論:緑が多い場所に住んでいる人は医療費が少ない

緑が多い場所に住む事と医療費の関連を検討

療養のために緑豊かな土地に移住する、というのは昔からあると思います。

名作「となりのトトロ」でも、サツキとメイはお母さんの療養のために田舎に引っ越しました。

では実際には緑が多い土地に住むこと(緑被率といいます)に意味があるのでしょうか?

2010年代の後半から、緑被率と健康状態の論文が多数発表されたようです。

それらの論文では、緑被率の高さは心臓や脳の血管疾患(心筋梗塞や脳梗塞)、呼吸器疾患、血糖値が少ないことと関連していました。

また死亡率や母胎転帰といった重要な事象とも負の相関を認めていました。

つまり、緑豊かな土地は健康と関連していることが分かっています。

この関係は、ストレスの軽減や身体活動の変化、大気質の変化に基づくようです。

健康状態に良い影響を与える可能性があれば、医療費も減るのではないか?

という仮説を立てて今回の研究が行われました。

最も緑が多いところに住んでいる人は年間医療費が374ドルも少ない

結論から述べると、緑が多い所に住む人ほど医療費が少ないという結果でした。

今回の研究では緑の多いところに住んでいるかは、Google Earthの画像データから算出してます。

言わずとしれたGoogleのアプリの一つですね。

医療費に関しては、カイザーパーマネンテ北カリフォルニア病院のデータを抽出してます。

これらのデータを統合して、緑被率によって10段階に分類し医療費を比較しました。

その結果、緑被率が高いほど医療費が段階的に少ない、ということが分かりました。

こういった量的依存が見られるデータは真実性が高いです。

その差が結構大きく、緑が多い場所上位10%に住んでいる人は、下位10%に住んでいる人と比較して、医療費が年間374ドル少なかったです。

最近円安が進んでいるので、円換算すると約5万円と結構なインパクトですよね。

研究方法

カリフォルニア北部の病院を利用してる約520万人を抽出

カイザーパーマネンテ北カリフォルニア病院の医療システムを2年以上用いている人が対象

Google Earthの画像データから緑の多さを数値化

植物が緑の波長を反射しないことを利用した正規化植生指数を使用

行政や国勢調査のデータから健康に関与するデータを抽出

年齢や性別、肥満度、喫煙歴、収入や学歴のデータを抽出

緑被率を10段階に分けて医療費の差を比較

STEP3で抽出したデータを統計学的に調整し、緑被率を医療費の関係を検討

カリフォルニア州北部のデータを仕様

今回の研究の舞台はアメリカ西部のカリフォルニア北部。

カイザーパーマネンテ北カリフォルニア病院の医療システムを利用している約520万人が対象です。

調査期間は2003年から2015年と10年以上とられています。

この期間に2年以上システムを利用している人が採用されています。

この地域の人口の約25〜30%がこの医療システムによる治療を受けているそうです。

半分以上がこのシステムを使ってないので、やや選別された群になります。

Google Earthの画像を用いて、緑の量を10段階に分けて比較

10段階に分けた正規化植生指数

緑の豊かな場所に住んでいることを緑被率といいます。

これを算定する方法はいくつかあるようですが、今回は画像を使った方法を用いてます。

正規化植生指数(NDVI)を指標としています。

植物は緑の波長を反射する(だから緑色に見える)性質を利用する方法で、衛星画像に見られる緑を反映し、緑地と健康の研究では一般的に使われているそうです。

画像データから算出できるようで、Google Earthのデータを用いて算出しています。

こういう研究にも使えるGoogleのデータって凄いですよね。

NDVIの正確性は、カリフォルニア州の林業で使用されるデータを用いて検証されています。

NDVIを用いて住居から250m、500m、1000mの3段階の距離における緑の多さで対象者を10段階にわけました。

健康に影響する他の要因は統計学的に調整

対象者の年齢や性別、人種に関しては行政のデータから抽出しています。

また肥満度(BMI)や喫煙に関しては電子カルテから取得しました。

年収や教育レベルは健康と相関しており、こういった研究では重要になります。

しかし、今回は詳細な社会経済的なデータは得られなかったため、国勢調査のブロック毎のデータとリンクさせる方法で、統計学的な調整は行われました。

住宅密度や人口密度に関しても国勢調査のデータを参考にしています。

またカリフォルニア州の公衆衛生局によるPM2.5の濃度も調整に用いられました。

上記データは、健康に影響する因子であり、緑被率との医療費の関連性にも影響します。

そのため、これらのデータを統計学に調整し、緑被率と医療費の直接的な関連を検討しました。

ポイント

カリフォルニアの病院のデータとGoogle Earthを用いた緑被率のデータを使用

緑被率で10段階に分けて、医療費の差を検討

研究結果

緑が多い場所に住んでいる人は高学歴・高所得

対象者の背景に関して解析してみると、緑が多い場所に住んでいる人は、年齢が高く、男性の割合が高かったです。

また高所得で高学歴の人が多い傾向がありました。

日本の場合は、高収入・高学歴の人が都市部に集中しているため、背景が異なっていることが分かります。

言われてみればアメリカの大金持ちは、緑多い土地に大きい屋敷も持っている印象ですよね。

近隣の住人の困窮度も緑が多い場所ほど低かったです。

これは日本でも同様の傾向がありますね。

緑が多いほど段階的に医療費は減少

健康に関わる因子を調整した際の医療費の比較

メインの結果である緑被率を10段階に分けた、医療費の比較です。

上の画像は医療費の総額を比較したものです。

最も緑被率が低い人を1とした時の比率を示しています。

最も緑被率が高い人は最も低い人と比較して医療費が8%少ない、という結果でした。

これが金額にすると年間374ドル=日本円で約5万円になります。

5万円は個人的にはインパクトが大きいのですが、この辺は個人の感覚ですかね。

何よりお金で買えない健康に影響するというのは重要なデータかと。

ちなみにこの内訳に関しても検討が行われています。

内訳をみると、入院費や救急外来受診の費用が下がっています。

どのような疾患で入院や受診したかは不明ですが、比較的重症な疾患によるものが予想されます。

ポイント

緑被率が高い場所に住んでいる人ほど、医療費が少なかった

上位10%は、下位10%と比較して年間374ドルも医療費が少なかった

特に差が大きかったのは、入院費と救急外来の受診費

私なりの結論

緑が多いほど健康になれるのは理にかなっている

今回の研究は、これまでのデータから緑が多い場所に住むと健康になる、というの裏付けになっています。

医療費というのは分かりやすい客観的なデータなので説得力がありますよね。

また緑被率に応じて段階的に、医療費が下がっているというキレイなデータは説得力を増します。

なので緑が多い場所に住むと医療費が下がる、という結論には賛成です。

一方で緑が多い所にいても、健康的な活動をしなかったり、ストレスを貯めていては今回の研究の再現が難しくなる可能性は否めません

健康的になるメカニズムとして考慮されている、ストレスや運動量に関してデータを集め、調整や解析を行えばその辺りはハッキリすると思いますので、今後の課題ですね。

海外データである点は注意が必要

今回の研究は、アメリカのカリフォルニア州のデータによる検討です。

ご存知の通り、日本とアメリカでは医療のシステムが異なります。

医療機関へのアクセスは平等である、という前提の元で今回の研究は組まれています。

しかし実際には保険に入っている人とそうでない人(特に貧困層)とではアクセスは大きく異なります。

今回の医療システムを利用している時点である程度、高収入の人が選択されている点は考慮に入れるべきですね。

収入を元に統計学的な調整を行ってますが、国勢調査によるブロック毎の調整なので、収入や学歴はある程度影響していると考えた方が妥当でしょう。

またアメリカの方が医療費が高い事は有名ですので、日本で同じ研究をしても金額のインパクトは少ないかもしれません。

とは言え、お金で買えない健康に影響があるのは確からしいので、この点は日米で共通かと思います。

週末に自然にふれるだけでも有効では?

今回の研究は、人が緑に触れる事の重要性を示唆しているものでもあります。

想定されているメカニズムとして、緑がストレスを軽減する、緑豊かな土地での運動量の増加、大気の質の改善があるというのは、以前の研究から言われています。

となるとそういった場所に住まなくとも、定期的にそういった場所に行き、自然に触れることで同様の結果を得るこはできないのでしょうか?

今回の研究ではそういった点は検討してないので、わかりません。

しかし考察においても、緑の多い土地にどう訪れて、体験するかが重要とも書かれており、同じようなことを研究グループも考えていることがわかります。

個人的には、子どもには小さい頃から自然に触れる機会を増やしてあげたいと思っているので、それが健康につながれば最高だなと思います。

自然からは学べることも多いですからね。

まとめ

いかがでしたか?

今回は「緑が多い場所に住むこと」と「医療費」の関係を検討した論文を紹介しました。

Take Home Message

●アメリカのカリフォルニア州の住人を対象に行った研究

●参加者は北カリフォルニア病院の医療システムを2年以上利用している520万人

●Google Earthの画像データから緑の多さを算出

●緑被率(緑の多さ)で10段階に分けて比較

●医療費に影響するような、肥満度・喫煙・収入・学歴などのデータで調整

●緑被率が高いほど、医療費は段階的に少なかった

●上位10%と下位10%の差は年間374ドル(約5万円)

●日米の医療システムの差から、そのまま日本人には適用できないか

●緑に触れることが健康に良い影響を与える事を支持するデータではある

都内に住んでいると、親が積極的に自然に触れる機会を設けないと、なかなか緑豊かな土地での経験というを積ませられないの現状です。

今回のように健康面にも良い影響を与えていることが分かると、より積極的に自然に触れさせたくなりますよね。

都内からだと高尾山がアクセスの良い緑豊かな場所ですので、以前の記事を参考にしてみてください。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

明日からの子育てに役立てば嬉しいです。

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